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査察調査だと事前連絡はこない!企業が取るべき事前対策・税務調査への応じ方について
通常の税務調査とは別の、さらに注視すべき「査察調査」と呼ばれるものがあります。
通常の税務調査であれば事前連絡があるのに対し、査察調査は予告なく突然やってくるため対策をとるのが難しいです。
しかし、何の脈絡もなく査察調査が入るわけではありません。
適切に税務へ対応しており、普段からの備えがあれば、査察調査のリスクは大きく減らすことができるでしょう。
当記事ではそのために知っておきたい査察調査の特徴や企業が取るべき対策について解説していきます。
査察調査とは
査察調査は国税局査察部が実施する特別な税務調査で、一般的な税務調査とは異なり、「悪質な脱税を摘発」「刑事責任を追及すること」を目的としています。
具体的には、国税犯則取締法に基づいて行われる強制的な調査であり、適正公平な課税を実現することと、申告納税制度の維持を図る目的で実施されるものです。
通常の税務調査との違い
査察調査と通常の税務調査では、次のような違いがあります。
項目 | 通常の税務調査 | 査察調査 |
実施主体 | 所轄税務署 | 国税局査察部 |
調査の性質 | 任意調査 | 強制調査 |
目的 | 申告内容の確認・是正 | 悪質な脱税の摘発・刑事告発 |
事前通知 | あり | なし |
調査期間 | 数日~数週間 | 数ヶ月~1年以上 |
通所の税務調査に比べると、警察のする捜査のような性質を持っているのが大きな特徴です。
実際、調査官には臨検・捜索・差押えなどの大きな権限が与えられており、納税者の同意がなくても調査を実施することが可能とされています。
査察調査が行われる具体的なケース
査察調査は、以下のような重大な不正が疑われる場合に実施されます。
- 多額の所得隠し
・・・売上を隠したり架空経費を計上したり、組織的な所得隠しが疑われる場合。 - 悪質な手口による脱税
・・・二重帳簿の作成や取引先との通謀による不正など、計画的な脱税が疑われる場合。 - 反社会的な脱税スキーム
・・・マネーロンダリングや租税回避スキームなど、社会的影響の大きな不正が疑われる場合。
査察調査後は告発される可能性も高く、また、告発された場合には非常に高い確率で起訴にまで至るのが実情です。
査察調査は事前連絡なく突然やってくる
査察調査に関して留意したい点は大きく2つあります。
1つは「強制力がある」という点です。
社内への立ち入り、帳簿書類の差し押さえ、金庫やロッカーなどの開扉、関係者への質問・取り調べなどを強制的に行う権限を調査官は持っています。
そしてもう1つが「事前連絡がない」という点です。
ある日突然、調査官が事務所に来訪して調査が始まるのです。
あえて連絡をしないことには次のような理由があります。
査察調査で事前連絡を行わない理由 | |
証拠隠滅を防ぐため | 確実な証拠を収集する必要があるが、事前に連絡をすれば、不正の証拠となる帳簿や証憑を隠したり、破棄したりする可能性があるため。 |
関係者の逃亡を防ぐため | 脱税事件の主犯や関係者が、調査を察知して逃亡するリスクを防ぐ目的もある。特に組織的な脱税が疑われるケースではこの点も重要となる。 |
同時多発的な調査の実効性を確保するため | 本社・支店・取引先・関係者の自宅などを同時に調査することで、証拠の散逸を防ぎ、調査の実効性を高めている。事前連絡があるとその目的を果たすことが難しくなってしまう。 |
査察調査を避けるための事前対策
査察調査は、あくまでも悪質な脱税が疑われる場合に実施される特別な調査です。
そのため日頃から適切な税務を心がけることで、査察調査のリスクは大きく減らすことができます。
以下では、その具体的な事前対策について解説していきます。
正確な申告を徹底
査察調査を避けるために有効で、もっとも基本的な対策は「正確な申告を行うこと」です。
以下の点を意識すると良いでしょう。
- 期限内申告の厳守
- 売上の適切な計上
- 経費計上の根拠の明確化
- 税法上のグレーゾーンの確認
無申告や過度な過少申告は、査察調査のきっかけとなりやすいため避けなくてはなりません。
適切な帳簿・証憑管理
取引の証拠となる帳簿や証憑の適切な管理は、税務調査への対応だけでなく、査察調査のリスク軽減にも直結します。
以下の点を意識すると良いでしょう。
- 帳簿書類の正確な記帳と保存
- 証憑の適切な整理・保管
- 電子帳簿保存法への対応
- バックアップデータの保管
- 保存期間の厳守
内部統制の強化
社内での不正を防止するための仕組みづくりも大切です。
全社的に内部統制を強化し、経理部門だけでなく営業部門や購買部門なども含めて管理体制を整えていく必要があります。
以下の点を意識すると良いでしょう。
- 部門間のチェック体制の確立
- 決裁権限の明確化
- 従業員へのコンプライアンス教育
- 定期的な内部監査の実施
税理士との連携
税理士と顧問契約を交わし、いつでも相談できる状態にしておくことで、潜在的な問題を早期に発見して対処することができます。
特に、事業規模が大きな場合や税制改正への対応が必要な場合、税務調査を受けることになった場合には積極的に税理士を活用しましょう。
税務調査への適切な対応
通常の税務調査が査察調査への入り口となる可能性があります。
調査にて多額の脱税が発覚し、その手口が悪質であると判断された場合などには、より本格的な調査が必要と判断されて査察調査の実施が決定されるかもしれません。
そのため、事前連絡のある通常の税務調査を受けることになったときには以下のような対応を心がけることが大事といえます。
- 調査官への誠実な対応
- 必要な資料の適切な提示
- 質問に対する正確な回答
- 指摘事項への迅速な対応
- 必要に応じた修正申告の実施 など
ただし、税務調査で指摘を受けたからといって、必ずしも査察調査に発展するわけではありません。
重要なのは、指摘された問題点を真摯に受け止めて適切に対応することです。
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